日本でのガラスの名称と語源

では、世界ではどういう意味でどういう言葉で呼ばれているのでしょうか。
イタリアでは「ヴェトゥロ(vetro)ガラス」、フランスでは「ヴェール(verre) グラス/コップ」、スペインでは「ヴィドリオ(vidrio)結晶/クリスタル」などと呼ばれるガラスは、ローマン語系の言葉ではラテン語の「vitrum ガラス」が語源になっている、と言われています。

「vitrum」は、ガラスの他に、藍(インディゴ)の原料となる「大青(タイセイ)」という植物をも意味する言葉です。そこから類推されたのかもしれません。また、この「大青(タイセイ)」は「glastum」と別の言葉もあります。

英語やドイツ語などゲルマン語系の言葉を話す国では「glass」や「glas」と呼ばれ、先に触れたものとまったく関連のない言葉のようにも感じますが、「vitrum」ではなく「glastum」が語源になっているとも、考えられています。イギリスでは青い色のガラスを「GUADUM」や「GUASTUM」と呼ぶため、関連がうかがえます。
植物の青が、ガラスの青に通じている……という考えは、日本のガラス名称「瑠璃」と思い出します。植物ではなく鉱物ですが、「瑠璃」も青(ラピスラズリ)を指す言葉です。

一方で、紀元1世紀頃、ドイツにおいて装飾品の琥珀(ラテン語で glesum、アングロ・サクソン語で glaer)が次第に枯渇し、その代替品としてローマからガラス(vitrum)が入ってきたとき、これに「ガラス glass」という名前を与えた……という説もあります。

「英語のglass 及びドイツ語のGlasの語源は、普通のゲルマン語(英独スカンジナビア語など)であるgleissen(輝く)、glitzen(キラキラ光る)、Glast(光輝)などに関係のある」……とか何とか。ガラスだけではなく氷のような「表面が滑らかでつやを持つつるりとしたもの」や「ガラスの原材料」を「ガラス」と呼んでいたという一説も。

ちなみに、現代英語の「glace」には「滑らかな、艶のある」という意味があり、「glacis」には「なだらかな斜面」という意味があります。それを踏まえると「氷河・glacier」も似た語源のようです。

ロシアでは「チェクロ стеклянный ガラスの」やポーランドでは「シクヴォ(szkło)」などスラブ語系の国では、「ZECHCKIH」という「透明であること」を意味する言葉を語源となり……ここはちょっと調べきれませんでしたが……、やはり「透明」という意味がありました。

これらを踏まえて日本のガラスの名称を振り返ると、ガラスとは海外から伝わってきたものなのだ、とよくわかります。